犬のグレインフリータイプのドッグフードは、心臓や腎臓・肝臓に負荷をかけて、疾患の原因になる(関係がある)と、2019年頃に言われたことがありました。
しかし、グレインフリーが心臓病の原因になるというのは濡れ衣で、グレインフリーの食べ物が病気の原因になると証明されたわけではありませんし、証拠もありません。
まして、最新の検証・実験の結果でも、グレインフリーのフードを食べている犬の、病気リスクが上がったということも一切なく、リスクも認められなかったとされています。

こんな発表されたら焦りますよね
しかし、いまだに一部サイトでグレインフリーの誤情報が出ていたり、グレインフリーが悪かのような考えもあったりすることも…。なにを信じるか・どの情報をあてにするのかは、個人の考え・受け止め方によって、大きく違ってくるのでいたしかたない部分もあるのでしょうね。
当サイトも、獣医も管理栄養士もトレーナーも、みんな考え方は人それぞれというスタンスなので、考え方の違いを批判するつもりは一切ありません。しかしこの機会に、当サイトのグレインフリーについての考え方・見解について、触れておきたいと思います。
なお、いろいろ書いてありますが、犬の体質には個体差がありますので、「うちの子はどうなんだろうか?相談してみたい」という方は、お気軽にお問い合わせください。(※状況によっては、動物病院へ行くことをおすすめすることもあります。ご了承ください。)
「グレインフリーは心疾患リスクを上げる」という考えに確証なし!
2019年にアメリカ食品医薬品局(FDA:U.S. FOOD & DRUG ADMINISTRATION、以下FDA)が、「グレインフリーは犬の心疾患(拡張型心筋症)に関係しているのではないか?」と発表をしました。
しかし、この情報は確証もなく、関連性が完全に把握できたわけでもありませんし、グレインフリーのフードすべてがダメといっているのでもありません。※追ってご紹介します
あくまで、統計を取ってみた結果、「関係性があるのかもしれないな~?証明する決定的なデータや情報はないけど」というレベルの話で、仮定・仮説的にそうではないか?と言っただけの話です。

あたかもグレイフリーが絶対ダメみたいに伝わってしまった!
食べたもので体はできているわけで、口にした物が健康に関係しているのは間違いないのですが、この統計は、拡張型心筋症(DCM)になった犬が、どんなフードを食べていたのか?という情報を集めただけの話。
しかも、リサーチ情報・調査内容に
- 寄せられらすべての情報をしっかり検証して、確認を取ったというわけではない
- グレイン使用のフードを食べている犬でも拡張型心筋症になった犬はいる
- グレインフリーが危険だという証拠(エビデンス)はない
とも明記されています。つまり、レポートの詳細をちゃんと読み、調査が進むにつれてその後にも更新されている調査結果をちゃんと後追いしていれば、こんな誤解を招くようなことは起こらなかったのです。
調査のタイトル・テーマが、「特定の食事(Certain Diets)と犬の拡張型心筋症(Canine Dilated Cardiomyopathy)の潜在的な関連性」というもので、その中でたまたまグレインフリーがやり玉に挙げられ、あたかもグレインフリー全体がよくないかのように伝わってしまいました。
アメリカ食品医薬品局は、心筋症になった犬が食べていたフード名も公開
アメリカ食品医薬品局(FDA)は、調査において、心筋症になった犬が食べていたフードの具体的なフード名まで挙げています。しかも、どのフードを食べていた子が何パーセントの割合いたかという情報まで公開しました。そこには名だたる有名フードも挙げられています。
確証がないのに、こんな情報を出されたら、メーカーにとっては風評被害もいいとこではないでしょうか?これ、メーカーからしたらたまりませんよね。また、挙げられたフードを与えていた飼い主さんをも不安にしたことでしょう。
当サイトでそのフード名までを書いてしまうと、実際にそれを与えている人の不安をあおるだけになってしまいますし、特定のフードを酷評するつもりもありませんので記載はしません。が、こちらのFDAの記事にはフード名が記載されています。(日本では買えないものもあります)

グレインフリーよりも、高たんぱくがまずいのでは…
見ていただければわかるのですが、高たんぱくなフードが名を連ねているので、個人的に思うのは、グレインフリーが心筋症に関係しているのではなく、むしろ、高たんぱくなフードが原因で心臓に負荷がかかっているだけでは…と思いましたが。(※個人の見解です)
しかも、FDAは2019年に突如、グレインフリーが心筋症に関係があるのでは?!と発信したのち、何度か検証結果をアップしていましたが、2022年に、確証がつかめるまではこれ以上、情報を更新しないとだけ発表して、現在に至るまで放置しています。
ですので、みなさんは「そんなことを研究している人がいる」「騒がすだけ騒がした」と思っておくくらいで良いです。追ってお伝えしますが、その後、別の研究グループが、グレインフリーと心筋症は関係がないという検証を報告しましたので。ご安心ください!
「グレインフリー」とは?犬は穀物でアレルギーが出るって本当?
グレインフリーとは、Grain-free=穀物を使用していない(穀物不使用)ことをいいます。ドッグフードにおいては、小麦・とうもろこし・大麦・ひえ・あわ・きび・米(玄米含む)・オートミールなど、イネ科・ムギ科のものを使用していないものと考えてください。
小麦・トウモロコシや大麦などの消化がうまくできない体質の子もいて、アレルギー症状が出てしまうことがあるため、グレインフリーを売りにしたフードが誕生しました。
誤解がないようにお伝えしておきたいのですが、「アレルギー症状が出ることがある」というだけで、なんの問題もなく食べられる子もいます。ですので、穀物(小麦・トウモロコシ・大麦など)は犬に与えてはいけないということではありません。

合う子・合わない子がいるというだけの話
さまざまなアフィリエイト収入を目的としたサイト)で、犬の祖先オオカミは穀物を食べないので、小麦・トウモロコシなどがよくないなどと書いるため、誤解している方も多いのですが、ダメということではなく、合う子・合わない子がいて、与える量は注意しようという話です。
それに犬の祖先がオオカミという説にはさまざまな論議がありますし、犬とオオカミはたとえルーツが同じだったとしても、犬はオオカミではありません。別の生き物ですから、オオカミが穀物を食べないから、犬も食べないという考えは違う気もします。(が、その考えの人もいます)
- おやつで少量食べる分には問題ない
- フードでも主原料が穀物ではなく、少し配合されているくらいなら食べられる
- 特定の穀物だけは合わないけど、ほかの穀物は大丈夫
という子もいますし、飼い主さんが、愛犬の体質に合わせて選ぶ目を持っていればOK。食べられる子なのであれば、適量は与えたって問題はないのです。
グレイン(穀物)を配合する理由とは?メリットとデメリットを紹介
なぜドッグフードに穀物を配合するのか。少しここで確認しておきましょう。配合するには、それなりのメリットがあるからなのですが、
などが穀物をフードに配合するメリット(配合する理由)といえます。
たしかに、穀物を含め、たくさんの原材料が配合されているフードを食べていた方が、トータルからしてみると細かい栄養成分も摂取しやすい傾向があるのは事実です。

体質によっては、合わないものを摂取するリスクもあるよね
ただし、デメリットももちろんあって、絶対ではないとはいえ、
などが挙げられます。結局は体質によって、良し悪しは判断するべきなんですよね。
なお、グレインフリーにすることで、メリットとして挙げた、フードをかためる(まとめる)役割と、炭水化物の栄養源でもある「でんぷん」が足りなくなってしまいますよね?
そこで、多くのグレインフリーフードでは、豆類(ひよこ豆、レンズマメなど)やイモ類(ジャガイモ、サツマイモ)で代用して、フードがまとまるよう、また必要な炭水化物を摂取できるように調整・配合して作っています。
グレインフリー全体ではなく、豆類やイモ類に疑惑が向けられただけ
先ほど、「特定の食事が心筋症に関係しているのかも?」という調査であるとお伝えしましたが、FDAが心筋症に関係するのでは?と疑ったのが、グレインフリーフードに多くなる傾向がある、豆類とイモ類の配合量です。
お伝えしたように、小麦やコーン・大麦などの穀物を使わない分、代用として配合されている豆類やイモ類。しかし、その豆類やイモ類の摂取量が心筋症と関係あるのかも?と、FDAは考えました。
グレインフリーのフードが悪いかのように伝わっていますが、調査の詳細をみていくと、豆類やイモ類が関係しているのかも?と考えられたに過ぎず、グレインフリーのフード全体を指して、危険性を指摘したのではありません。

グレインフリーじゃなくてもイモや豆を使うフードも多いけど。
しかし、後に別の研究チームが、グレインフリーの豆類・イモ類の配合が多いフードを食べた犬の検証をした結果、心筋症になったという結果は得られず、検証に参加した犬も元気に過ごしている報告を出しました。
レポートによると、食べるものの条件は同じにして、豆類の原料配合率を0%、15%、30%、45%と替えていき、血液検査や心エコー検査を定期的におこない、経過を観察していったとのこと。
結果、摂取した豆やイモの量に関係なく、心筋症の兆候や変化は見られなかったのです。それでも豆やイモのせいにしたいというのであれば…我が愛犬が病気になった原因を、人のせいにしたい・フードのせいにしたいという、飼い主さんの心理かもしれません。
【当サイトの見解】グレインフリーの強みを生かして有効に使おう
犬の管理栄養士でもある私も、FDAが発表したグレインフリーに関する話は、裏付けもないため信用していません。穀物アレルギーの子には与えたら良いと思いますし、そうじゃない子でも食べたっていい、上手に与えて健康管理に生かしてあげら良いと考えています。
私がアメリカ食品医薬品局(FDA)の発表を信用していないのには、理由があります。
先にお伝えした、豆やイモが心筋症に関係ないとした実験でも、前置きとして「条件を同じにして調査をした」とのことでしたが、FDAが調査してまとめた内容は、特定のフードや年齢、犬種など条件を絞って調べたわけではありませんでした。

飼い方・食べるものも違うんですから、同条件ではないよね
ただ漠然と、心筋症になった犬の情報を集めてまとめただけ。さらにいえば、
などなど、前提条件がまったく明記されていません。そんな環境も体質も全然違う子たちの情報を、同じ病気になった子としてまとめて考えているのはいかがなのでしょう?犬の飼い方って、家庭によって全く違うのに、そんなんで精度の高いデータといえるのか…?
食べ物だけではなく、間違った意味で我が子扱いしている方もいますし、犬の食事に無頓着すぎる飼い主さん、散歩すら行かない、留守番が多いなど、危険な飼い主さんは一定数います。そんな諸条件が違う状態でデータを集めても、あてになるとは思えません。

つまりFDAの発表は詰めが甘いと思うのですが…
逆に言うと、飼い方(食事・運動・飼育環境)による病気リスクも極めて高いですし、間違った認識で愛犬の食べ物を考えている飼い主さんもたくさんいます。なんで犬を飼ったの?と言いたくなるくらい、犬に構ってあげていない・かわいがり方を間違えている人も多いです。
確証もない「よさそう」な情報や意識高い「ふう」な情報に振り回されて、結果、愛犬を苦しめている飼い主さんも多く、病気になる原因を飼い主さんが作っているケースはたくさんあります。
グレインフリーで心臓病になりやすいなんて、確証もなく事実ではありません。FDAが豆類やイモ類の多い穀物不使用のフードを、まるで病気の原因であるかのように発表したのは、いまだに正しい結論は出ていないとはいえ、少しやり過ぎたように思います。
今もグレインフリーが心筋症に関係があると信じるメーカー・獣医はいる
FDAのグレインフリーが心筋症に関係するという発表を理由に、今でもグレインフリーフードを製造していないフードメーカーも、一部ですが、実際にありますし、獣医であってもグレインフリーと心筋症の関係を伝えている人も未だにいます。
これについては、そのメーカーや獣医が不勉強ということではなく(不勉強なのかも?ですが)、グレインフリーについて、その人はそう考えているというだけの話です。こういう話は、信じたい人は信じますし。疑わしいのならやめておこうという考えだって自由です。
とはいえ、ある程度大きなフードメーカーになると、グレインフリータイプのフードと、グレイン配合のフードの両方を用意しているところもありますし、シリーズ展開が少ないメーカーだと、グレインフリーのみ・グレイン配合のみというケースもあります。選ぶのはあなた。

どの考え方が自分にしっくりくるかってだけでいいんだね!
大事なのは、誰が・どの機関が・どんな立場の人が、こんなことを言っていたとかではなくて、少し触れたように、
というように、受け取り方は自由で、今回の説明を読んで、ご自身はどう感じるか、どちらを選ぶがです。さらにいうと、あなたの大事な愛犬には、どっちが合うのか。それだけです。
お伝えしたように、当サイトの見解は、グレインフリーは心筋症に関係ないというほうが理にかなっていると思うので、その考えでいます。この話をどう捉えるのかは、メーカー同様、ご自身で判断してください。
グレインフリーが合わない犬はいる?大事なのは愛犬に合うかどうか
これまでにも少し触れましたが、犬は小麦やコーンなどの穀物を食べてはいけない・食べられないということはありません。ただし、個体差があって、合わない子もいるので注意する必要はあります。
たとえば、長期的に小麦やトウモロコシ、大麦が配合されているフードを食べている子で、皮膚炎や涙やけ、お腹の不調などがある子であれば、グレインフリーに切り替えてみるのもひとつです。もしかしたら、その不調は穀物が合わないから起きているのかもしれませんし。
逆に、少量の穀物であれば(主原料が穀物ではないフードであれば)、別に特に不調もなく食べることができるという子であれば、そこまでグレインフリーにこだわる必要はなく、むしろ、フードローテーションで、たまに穀物配合フードを与えてバランスをとるのもあり。

今はいろんなフードがあるからね!
インターネットサイトを調べると、「グレインフリーのフードは高たんぱくになりがちでシニアや疾患がある犬にはよくない」、「グレインフリーはタウリンが欠落しやすいので〇〇犬(犬種)はこういう疾患になりやすいので、グレインフリーはよくない」などの情報があります。
しかし、それは一概にはそうとはいえません。
というのも、グレインフリーでも、穀物配合フードよりタンパク質を抑えられているフードなんてくさるほどありますし、グレインフリーでタウリンが欠落するというのはFDAが発信した情報で、追って、グレインフリーでタウリンが不足することはないと証明されています。

そんな小手先の情報ではなく愛犬にはどれが合うかです
そんな、ネット上のさまざまな見解よりも、大前提として一番考えたいのは、愛犬にはどの情報が合うか・基本的な栄養はしっかりカバーできているフードなのか。それを見極めることです。
そして、不調が出る前に、しっかり愛犬の定期健診を受けて変化に気づくこと。
今の時代、ほんとうにドッグフードはたくさんの種類が販売されています。そんな中で、ネットの情報や、正しい勉強もしていない・知識のない犬友の話に振り回されるのではなく、正しい情報を自身でしっかり選んで・学んで愛犬を守れる飼い主でいてください。
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