「手作りごはん(手作りフード)こそ犬に良いもの!」と信じて疑わない愛犬さんも多いものです。しかし、なぜ手作りが良いと思っているのか、理論的に説明できますか?
当サイトでは、「犬の手作りフード・手作りごはんは良いって本当?栄養バランスの乱れに注意」と紹介しているとおり、AAFCO基準をクリアして販売されているもの以外の手作りフード(ご自宅で作るフード)については、相応の理由や考えがない限りおすすめはしていません。
それでも、「手作りの方が体に優しい!メリットはある」と考える方もいるでしょう。それはそれでいいと思います。たしかに手作りフードにもメリットはありますし、どの考えを選ぶのかは各自で決めることなので、なにが正解・これが絶対なんていうつもりもありません。

考え方はみんなそれぞれだから、それでいいのよ~!
しかし、理由も正しく答えられず、手作りのほうがいいと思うから・そのほうがよさそうだからというのであれば、なぜ手作りフードをおすすめしないのか、理論的に解説しますので、ぜひ一読ください。
手作りフードを与えようか迷っている方や、すでに手作りフードにしているけど、本当にこれでいいのか…と不安がある方にも、今回の内容は参考になると思います。手作りフードか市販のドッグフードか、秤にかけて愛犬にはどっちがいいのか考えみてください。
なお、いろいろ書いてありますが、犬には個体差もありますし、愛犬の体質に合わせて考えたいという場合には、当サイトでは各わんこに合わせた食事の提案のお手伝いが可能です。お気軽にお問い合わせください。
手作りフードをおすすめしない理由①栄養に偏り・不足が出る
ほとんどの市販のドッグフードは、ビタミンやミネラルが添加されています。ここでいう「添加」は、危ない化学合成添加物という意味ではなく、犬が必要とする栄養価をクリアするために補填されるの栄養成分のことです。
なぜそれら添加するのか?それは、使用されている原材料(魚・肉・野菜・果物など)だけでは、ビタミン・ミネラルなどが不足してしまうからです。
そこで、以下の写真の赤枠のように、不足分のビタミンやミネラル分などの栄養成分を「添加」することによって、フード全体の栄養をAAFCOの規定する犬に必要な栄養価基準をクリアするように製造しています。
考えてみてください。何年・何十年と研究を重ねてきているフードメーカーですら、天然の食材だけではAAFCOが提唱する犬に必要な栄養バランスをクリアすることはできません。だから添加しているわけで、それをを自宅でやろうとしたら、かなりの知識がある人でも相当難しいのは当然です。
補足までにお伝えしますと、犬の管理栄養士の勉強をしたことがあり、計算する知識さえあれば、
- たんぱく質量
- 脂質量
- 炭水化物量
- カロリー数
などの計算はできます。しかし、ビタミンやミネラルの分量は、それなりの施設・設備がないと簡単にはできることではありません。そのため、手作りフードの場合は、原則ビタミンやミネラルのサプリメントの使用が必須です。

犬の管理栄養士の資格を持つ私でも灰分の計算はできません…
たんぱく質や脂質などに主要な栄養素に比べたら、ビタミンやミネラルなんて少量と思うかもしれませんが、それらが少し欠けるだけでも重篤な健康被害につながることがあるので、馬鹿にできません。そのくらい、ビタミン・ミネラルのバランスの摂取量って繊細で難しいことなんです。
余談ですが、一部、ビタミンやミネラルの添加ゼロで作られているフードもあるのですが、栄養の保証成分としては極めて低い傾向があり、ギリギリAAFCOの規定をクリアしているレベルに過ぎず、長期的な給餌を考えるとあまり好ましいものではありません。
このように、本当に天然の食材だけでビタミンやミネラルまでバランスよく配合するのは、極めて難しいので、手作りフードの食生活では、健康的な栄養バランスをキープするのは到底無理なことだと思ってください。
手作りフードにビタミンやミネラルのサプリを入れていても要注意
仮に、手作りフードでビタミンやミネラルのサプリメントをしっかり与えているという場合であっても、まだまだ心配はぬぐえません。必ず、なんらかの成分に偏りは出ます。だって、その手作りフードの内容で、足りていない微量ビタミンやミネラルの種類って把握できていますか?
なにが足りていて、なにが不足しているのか、なにをどのくらい摂取できているのかまで把握できていることはほぼないと思います…。なぜなら、繰り返し伝えているように、ビタミンやミネラルの含有量・摂取量の把握って、それだけ難しいことがだからです。
ビタミンやミネラルって、とればとっただけ良いなんてことはありません。とりすぎないようにしたいビタミンやミネラルもあります。サプリメントの怖いところはそこです。よかれと思ってやっていたのに、過剰摂取になっているケースがありえます。

今は大丈夫でも、歳を重ねてから諸症状でるよ!!
人間の場合、即席の食べ物やコンビニ弁当やスーパーのお惣菜などできあいのものを食べるよりも、自炊したもののほうがいいと思うかたも多いでしょうから、その流れで漠然と、手作りフードってよさそうと思う方も多いかもしれません。それに、手作りフードを与えることで、
- うちの子は手作りで天然のものを食べている
- 添加物を一切使用してないものを食べている
- 毎日飼い主さんの愛情たっぷりのものを食べている
と思うと、とっても愛されているわんちゃんのように思えるかもしれませんが、手作りフードを長期的に与えるということは、栄養バランスという意味では、非常に偏ったごはんを与えていることになります。
愛犬が若いうちはまだいいのですが、歳を重ねるごとに、特定の栄養素が欠落する状態が続いてきたわけですから、必ずなにかしらの不調が出てしまうと思っておいた方がいいかもしれません…。
手作りフードをおすすめしない理由②長期的に与えるものではない
今の時代、インターネットで調べたら、たくさんの手作りドッグフードのレシピが公開されていますよね。しかし、インターネット・雑誌などで紹介されている手作りフードレシピは、長期的に与えることを前提としているものではありません。
一回のごはんとして、もしくは不調などのケアが目的の場合は、その症状が軽減するまでを前提に考えられたフードに過ぎないので、栄養バランス的には長期的に与えるのは不向きです。これは、毎回レシピを変えて作っていようが関係ありません。
たまに気分転換で手作りフードを与えてみたり、お誕生日などちょっと豪華にしてあげたかったりと、なんらかの理由から手作りフードを与える機会には、サッと調べて作れるのでとっても便利ですが、あくまでその時だけを想定して作られたレシピです。

どれも美味しそうに見えるよね~
しかし、そんな特別感・愛情たっぷりに見える手作りフードですが、お伝えしているように、やはりそれらもレシピもビタミンやミネラルの配合まで想定されているものはほぼありません。それだけを毎日食べ続ける前提として公開されているレシピではないのです。
そのため、前項でお伝えしたのと同じように、長期的に手作りフードを食べることによって、栄養をバランスよく取れなくなってしまいます。栄養バランスに偏りが出てきてしまうので、くれぐれもご注意ください。
本来はそういったのを公開している側も、注意喚起しておいてほしいものです…。そういったうわべだけの意識高い系の情報サイトや、間違った犬のかわいがり方を助長しているサイトに振り回されないようにしましょう。
手作りフードをおすすめしない理由③療法食を食べなくなる危険
愛犬になんらかの不調があり、獣医師から療法食を与えるように指示をされることがあります。しかし、手作りフードに慣れている子の場合、療法食を食べなくなる(食べてくればい)危険があるのです。
そもそも療法食とは、栄養成分のバランスを調整したり、原材料を変えたりされた、症状・不調の軽減のための専門フードで、一般的なフード(=総合栄養食)とは違う、病気や不調を治療するためのフードのこと。つまり、健康な犬が食べるものではない栄養価になっています。
成分を調整するために、健康な犬が食べるものとは少し異なる構成になっており(=犬が食べたくなるような原材料ではないもので構成されている)、ハッキリ言って嗜好性は二の次。とにかく、不調を治すことが目的なフードです。

よくなるためのフードだから仕方ない…
しかし、嗜好性は二の次とはいえ、食べてくれなければ意味がありません。ですので、療法食の場合は、嗜好性を上げるために一般的にはさ避けたいといわれるような、動物性油脂や植物性油脂、化学合成添加物など配合します。(無添加で、油脂などを使用していない療法食もあります)
手作りフードは香りもよく、嗜好性が高いので、食いつきはいいのが売りでもありますが、その嗜好性の高さに慣れてグルメになると、「もっと香りが良いもの出して!」と食べない子もいます。
そうなる、療法食を食べてくれなくなり、治療法のひとつを断念せざるをえません。食べ物を替える・気をつけるだけで、症状を軽減できる病気や不調もあるため、できれば薬や手術などはせず、療法食で体質改善をしていきたいところなのに…

療法食はうまく使えば強い味方なんですよ
それを食べないのは致命的ですが、でも、そのように療法食を食べない犬に仕立て上げたのは、これまで手作りフードを与え続けた飼い主さんの責任でもあります。また、食いつが悪いからとトッピング(ウェットフードや手作りフード、茹でた肉や野菜)をするのもご注意ください。
同じく、美味しい部分(香りがいい部分)だけ食べて、肝心なフードを食べてくれなくなることがあります。いずれにしても、市販フードのみでも食べられる状況にしておかないと、何かトラブルがあって療法食を獣医師から出されても、食べないという最悪の事態を招きかねません。
療法食を出されるということは、普段の食事通りには食べられない・食べさせない方が良いタイミングということ。それを食べない(食べたがらない子に仕立て上げてしまう)と、愛犬にとっても飼い主さんにとっても、良いことはないのではないでしょうか。
手作りフードをおすすめしない理由④フードジプシーを加速させる
少し触れましたが、食いつきにお悩みの方・好き嫌いにお悩みの方が、最終的に市販フードをあきらめて、手作りフードに至っているケースもあります。
たしかに、手作りフードは香りもよく嗜好性が高いので、犬の食欲の本能を刺激することにもつながりますが、食べない・好き嫌いが多いからといって、手作りフードに寄せてしまうのは実は、かえって
- 好き嫌いや偏食を助長してしまう
- 食に対するわがままさを加速させる
ことにもつながっているのです。これは前項の療法食の話にも関係しています。

もうこれ飽きた!他のもっと美味しいの出して!

また食べなくなった…次は何をあげよう…
というように、飼い主さんが愛犬に寄せすぎることにより、もっともっと!という習慣を愛犬に着けてしまうのです。実はこうなっているご家庭、めちゃくちゃたくさんあります!この場合、まずは飼い主様ご自身の対応が原因で、愛犬のフードジプシーを助長しているという自覚が必要です。
食べないには飼い主さんとしても一番心配なことだと思いますし、「もう、食べてくれるのであればなんでもします!」という気持ちは、同じ犬を飼う人としてもわかります。
でも、食べないのであれば、まず、食べる工夫をする・なぜ食べないのかを考えることが先です。それをしないで、とにかく愛犬が食べるものを!と探しているようであれば、愛犬は

イヤイヤしたら、違う美味しいの出てきた!
ということを覚えてしまうのです。要求をする(=食べない)ことで、食べたいものを出してくれるという考えができて、超グルメ犬に育ってしまいます。こうやってどんどん、好き嫌いをして、食べたい好きなものが出てくるまで頑として食べないアピールをしてしまうのです。
アレルギーなどいたし方ない理由なら、フードを替えるほか仕方ないこともありますが、アレルギーでもないのにただ好き嫌いをするからというだけで、手作りフードに至ってしまっていると、本当に食べられるものがなくなってしまいます。
好きなもの(おやつなど)しか食べないなんてなってしまうと、栄養バランスが崩壊して、シニア期以降の衰弱も他の子以上に早く進み、結果可哀想な目に遭わせてしまう危険も…。手作りフードは愛情と見せかけた表裏一体のものです。いいものという考えはしないようにしてください。
手作りフードにはメリットもあるにせよ、長期的な給餌には注意を!
基本的に、手作りフードは、
など、よくなるまでの一時的な対応として与えるのはいいのですが、長期的に与える前提ではないほうがいいと思います。
人間からしたら、ドライフードは見た目もおいしくなさそうだし、手作りフードのほうが彩りも香りも豊かでおいしそうに見えていいものと思うかもしれません。でも、犬は見た目で食べ物を食べているわけではなく、香りで食べています。ですので見た目は関係ありません。

おいしそうなのを食べてうれしそうと考えるのは飼い主のエゴ
あるいは、人間の感覚で、「できあいのものを買って食べたり、外食で済ませたりするより、手作りのほうが体にいい」と漠然と思っている方もいることでしょう。しかし、考えてみてください。
知識のない人が手作りをしたインスタント麺だって、手作りですよね?かたや、外食であってもできあいの惣菜弁当であっても、ちゃんとした栄養の知識を持つ人が、無添加で作ったものもあります。どっちが健康にいいのでしょう?
手作りにこだわって自宅で作った食事であっても、無知ゆえに添加物をたくさん使っているケースだってありませんか?このように冷静に考えたら、きっとみなさんも気づけると思います。愛犬のことを理解して、正しく判断できる飼い主さんでいてくださいね!
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