ドッグフードについて調べていると、「4Dミート」「◯◯ミール」という言葉を見かけることがあります。そもそも4Dミート・ミールって、いったいなんなのでしょう?正しく理解しているでしょうか。
それに、「4Dミートやミールはよくない」なんてよく言われていますが、本当にそんなによくないものなのでしょうか。
今回は4Dミートやミールの実体と、日本でも4Dミートを使用しているフードが出回ることはあるのかなど、詳しくご紹介していきたいと思います。
ドッグフードの説明でよく出てくる「4Dミート」ってなに?
4Dミートとは、以下4つのDから始まる、あまり好ましくないものからとったお肉のことをいいます。
Dead | 事故で死んだ動物 食用に屠殺(とさつ)されたわけではない肉 |
Diseased | 病気がある動物の肉 |
Disabled | 障害を持っている動物の肉 |
Dying | 衰弱して瀕死状態の栄養価の低い動物の肉 |
ひと言でいうと安全性が極めて低く、栄養価も極めて悪いお肉のことです。
あまり愛犬に与えたいと思えない
見るからに、品質に不安がある方も多いと思いますが、FEDIAFでは4Dミートは禁止されていますが、AAFCOでは4Dミート禁止などの記載はありません。日本はAAFCOを基準にして、ペットの飼料ルールができているため、4Dミートのフードもよしとされているということになります。
しかし、言うまでもなく、4Dミートは質が良いとはいえません。栄養価も落ちている可能性もありますし、そんなものを食べ続けていたせいで、愛犬に不調が出てしまわないように注意したいところですね…。
4Dミートは嘘?!そもそもそんな質の悪いお肉は出回らない?!
あまり犬に与えたくない4Dミートですが、結論からお伝えしますと、日本では4Dミートは市場に出回ることはないと思っておいて問題ありません。(しっかり役所に申請して、承認・販売されているものであればの話です。)
そもそも、ペットフード安全性で、犬の健康に不安があるようなものは使わないというルールが決まっています。
(有害な物質を含む愛がん動物用飼料の製造等の禁止)
農林水産大臣及び環境大臣は、次に掲げる愛がん動物用飼料の使用が原因となって、愛がん動物の健康が害されることを防止するため必要があると認めるときは、農業資材審議会及び中央環境審議会の意見を聴いて、製造業者、輸入業者又は販売業者に対し、当該愛がん動物用飼料の製造、輸入又は販売を禁止することができる。
一 有害な物質を含み、又はその疑いがある愛がん動物用飼料
二 病原微生物により汚染され、又はその疑いがある愛がん動物用飼料引用元:ペットフード安全法
健康を害するような質のものは使わないって書いてあるね
万一メーカーが嘘をついて粗悪な質の原材料を使っていたとしても、検査機関が入ったり、ある程度の基準を満たしていないものは販売許可がおりなかったりというシステムになっていて、犬に害があるようなものは流通させないシステムになっているんです。
また、日本がペットフードの決め事を採用しているアメリカでも、さすがに4Dミートをそのままフードとして加工することはありません。そのため、ドッグフードが4Dミートでできているということはないと思ってOKです。
ただし、メーカー側には、どんな品質のお肉(魚)を使用しているのかまで記載する義務はありません。
日本ではペットフードは「もの」扱いですから…。
そのため、品質に自信のあるメーカーは、
- 仕入れ先の公表
- 鮮度の良さのアピール
- ヒューマングレードであることの主張
- 加工工程の公開
などをして、いかに品質がいいものなのかをアピールしていることもある反面、品質があまり…という場合でも、あえて詳細に触れる必要もないのです。
それに、4Dミートには該当しないけれども、それに近いあやしいものであっても、素性を公表しなくてもいいということですから、注意しなければならない点もあるのは事実です。
ミールを作る製法「レンダリング」とは?4Dミートとの関係は?
日本ではあまり聞くことがないかもしれませんが、「レンダリング」という言葉をご存知でしょうか?(この話は、この後4Dミートに関係してきますので、少々お付き合いください)
レンダリングは、もともとアメリカで始められた加工技術で、「レンダー(Render)=脂肪を溶かす」という意味があり、不要な油を取り除く工程のことを指します。こうすることで、可食部ではない部位も、最後までしっかり有効活用することができるのです。
栄養価を分解して使える部分は最後まで使うんですね
この説明だけではわかりにくいと思いますが、レンダリングの工程がわかりやすい動画がありましたので、以下の動画を確認してみてださい。※なにを言っているのかは気にしなくていいので、2分くらいまでどんな工程かわかればOKです。
焦げない程度の低温の火に1,2時間かけていると、脂質が肉から溶け出てきて、たんぱく質の塊と脂質に分離するのがおわかりいただけるでしょうか?この作業(こうなる工程)がレンダリングです。
分離した油脂を濾して、残ったんぱく質の塊を、
- 乾燥させたものが乾燥○○肉、ドライ○○
- その乾燥したものを粉にしたのがミール・○○粉(パウダー・骨粉)
です。動画にあった以下のこのギトギトの塊を、乾燥させたものなのか、乾燥させたものを粉末にしたものなのかというだけのこと。
これって肉なのかしら…
という人もいるのではないでしょうか?
これまでの解説で、肉は肉だけど、元がお肉なだけの加工したものということがおわかりいただけたと思います。
ちなみに、低温の火にかけるやり方以外にも、高温のスチーム加工でレンダリングする方法もあります。高温スチームで加工する工程の方が一般的な手法です。詳しくはこちらをご確認ください。
4Dミートの解説に「レンダリング」の話が出てきた理由
実は、このレンダリングの話は、4Dミートに少し関係しています。
今回はわかりやすいようレンダリングの工程を、家庭で食肉を使って低温加熱している動画を引用して紹介しましたが、ドッグフード(飼料)のためにレンダリングをする場合には、4Dミート、もしくはそれに近い品質の肉を加工している可能性は否めません。
気になる方は、動画サイトで、【rendering meat】【rendering plant】【meat meal】などのキーワードで検索いただければ、詳細をご確認いただけると思いますが、動物好きな人にとってはかなり閲覧に注意が必要な内容です。
動画はお見せできないレベルの工程です…
レンダリング加工においては、アメリカだろうが日本だろうが、どんな品質の肉や魚を使用するのかという規定はありません。逆に言うと、どんなものを使っていようが、レンダリングされてできたミールはミール、4Dミートを使ったってミールとして表記されます。
極論ですが、傷んでいて腐りかけのものであっても、レンダリングをして動物飼料のミールにすることができるということです。
ミールがすべて4Dミートから加工されたものというわけではありませんが、ミールのそもそもの加工前のものの質はよくない可能性があるということを、知っておいた方がよいでしょう。
ミールの品質や正体は、メーカーのみぞ知る…
それに、メーカーが原材料の詳細の情報を公開していて、品質の良いお肉・お魚を使用してレンダリング加工してミールにしていたとしても、ミールそのものにメリットとデメリットがあることをちゃんと考えておいてほしいのです。
ミールやレンダリング加工が悪いものというわけではありません。ただ、上手に向き合っていった方がいい側面もあるんですね。
その理由を知るためにも、ミートのメリットとデメリットを詳しく確認してみましょう。
ミートミール(○○ミール)や乾燥肉(ドライ○○肉)のメリットとは?
レンダリングしてミールにすることの1番のメリットは、先ほど少し触れたように、命を最大限に有効活用できることです。可食部だけをとってあとは捨てるのではなく、加工することで、いただいた命を無駄にしないという考えは大事なことではないでしょうか。
究極のリサイクル・エコと言いますか、人間が生きるために殺めた生き物の命を、無駄にしないで最後の最後までいかすのは良いことですよね。
ほかにも、ミールで得られるメリットは栄養面にもあります。
- 水分や脂質を取り除くことで、たんぱく質が凝縮される・密度が上がる
- 脂質や水分を落としているため、フードがサラッと仕上がり、低脂質なフードができる
水分や脂質が落ちるからだね
高温処理をして、水分と脂を落とすことによって、「たんぱく質だけが残って、脂質が落ちる」つまり、「太りにくくなって、筋肉をつけやすい」高たんぱくな物質に生まれ変わるというメリットが生まれるのです。
ただし、誤解がないよう説明しておきますが、高たんぱく・低脂質であっても、それなりに運動をしていない場合、筋肉に変換されなかったたんぱく質は、脂質に変わってしまうので、高たんぱく・低脂質=太らないというわけではありません。それなりの運動量が必要になります。
「ミールは脂質が落ちているのでダイエットに良い」なんて説明をしている動画やサイトがありますが、そういった語弊のある情報を鵜吞みにして、失敗しないよう注意してください。
ちょっと余談でした
また、補足ですが低温調理をする際にも、ミールを使用するとすでに余計な水分や脂質が飛んでいるので、効率よくフードにたんぱく質を配合することができ、加工時間が短縮できます。
通常、低温加熱製法でフードを製造すると、時間がかかってしまい量産できないことから、否応なしにフードの値段も高くなってしまうことがネックで、ほとんどのメーカーが高温調理製法でフードを製造しているのが現状です。
しかし、生肉から加工するのではなく、ミールからフードを製造するというだけでも、相当加熱の時間が短縮できるようになります。生肉よりもミールの方が衛生管理も楽ですしね。そうすることで、低価格でフードを卸せることにもつながります。
ミートミール(○○ミール)や乾燥肉(ドライ○○肉)のデメリットとは?
ミールや乾燥肉には、もちろんデメリットもあります。
具体的にご紹介してみますと…
- 一般的なミールは食物残渣(ざんさ)から作られていることが多い
- 副産物が使用してされている(可能性がある)
- 骨付きで加工するため、リンやカルシウムが多くなる
などがデメリットといえるでしょう。
特に、「残渣(ざんさ)」については、注意しなければなりません。
そもそも残渣とは、可食部ではない本来捨てるような部位(人間用の食品をつくるときに余った内蔵や骨などの副産物も含む)や、売れ残って捨てる前のお肉などのことです。
骨に残った切れ端の肉片も残渣です
アメリカのドッグフードのレンダリング工場を実際に見てきた方からお話を聞きましたが、あまり衛生的ではない、犬に与えたくないような肉が搬入されていることもあります。変色した肉や、骨についた微量の肉などの残渣です。
先ほど、ミールにする原材料の品質にはルールがないとお伝えしましたが、
- お見せできるレベルではないもの(衰弱した動物など)
- 4Dミートに該当するものや、それに近い品質の悪いもの
が使用される可能性はゼロとは言い切れません。
YouTubeにもレンダリングの動画がありますが衝撃映像です…
つまり、ドッグフードにダイレクトに4Dミートを配合することはなくても、ミールにして形を変えた状態では、フードに使用されているケースもゼロではない
ということなんです。
- 可食部から加工しているという表記がある(実際に可食部の肉をミールにしているフードはあります)
- 加工工程をHPの写真や動画などで公開している
- HACCPなどのトレーサビリティの体制が整っている(=ヒューマングレード)
- 原産地証明書や仕入先の情報の公開をしている
などでもない限り、ミールの実態は、メーカーのみぞ知る事実。
ヒューマングレードにも正式なルールはありませんし…
良いような言い訳や売り文句をつけて、良いもののように表現されていることもあるので、しっかり見極めるようにしておきたいところです。
さらに、骨ごと加工したミートミール(=肉骨粉・ボーンミール)の場合は、リンが多くなってしまう傾向があり、シニア犬や腎臓に不調がある犬にとっては、悪影響になってしまいます。カルシウムも多くなるので、尿結石も心配です…。
ミールに関する表記のルールも、少し曖昧な点があるので、やはり原材料の品質はメーカーに直接聞かないと詳細はわかりません。栄養価以前に、品質がどうなのか…という不安点が一番のデメリットといえるでしょう。
4Dミートやミール・乾燥肉でトラブルがおきたという報告はない
誤解を招かいないように先にご紹介しておきたいのですが、4Dミートやミールを食べたことによって、
- 病気を発症してしまった
- 命にかかわるトラブルが起きた
などという報告はありません。(もしかしたら、あっても言えないのかもですが…)
なにか理論的に害があるという証明がされているわけでもなく、安全性になにか致命的な問題があるという話ではないのです。
ミールや4Dミートが悪という話ではありません
ただし、絶対的な原因になっていなかったとしても、先ほど触れたように、カルシウが多すぎる・リンが多すぎるなどから、なんらかの影響を及ぼしてしまっている可能性はゼロではありません。
致命的ではないレベルだとしても日々、食べ続けることで不調の原因が積み重なっているケースもあるわけです。品質がよくない原材料のミールを食べていることで、思っているような栄養価を吸収できていないかもしれません。
とはいえ、私がこのサイトでもたまに警鐘を鳴らしている、アフィリエイト目的のフードランキングサイトなどではミールが入っているものはすべて悪かのように説明しているものもありますが、実際はなんの悪い報告もない・ミールにもメリットもあるということは知っておいてくださいね。
4Dミートやミールが「よくない」「危険」と言われる理由とは?
結論からお伝えしますと、ミールは犬に良くないものでも危険なものでもありません。しかしミールや4Dミートは「良質なたんぱく質」に該当しないことや、フードの第一主原料にはふさわしくないことから、そのような悪い印象が植え付けられているのだと思います。
そもそも、犬は新鮮な生肉・生魚(=フレッシュミート)を主原料としいる、良質なたんぱく質が取れるフードを食べることが理想です。
良質なたんぱく質とは、体で生成することができない必須アミノ酸をバランスよく含んでいるたんぱく質のこと。必須アミノ酸のバランスがいい食材・良質なたんぱく質が摂取できる食材は、「アミノ酸スコア」でアミノ酸価が100(満点)に近い数値の食材のことを指します。
たんぱく質はアミノ酸でできています
「アミノ酸スコア」の15ページ目以降、生肉・生魚が出てきますが、見事に100続きなのがわかります!
体作りの土台になる、アミノ酸バランスの良いたんぱく質を取るには、フレッシュミート(生肉・生魚)が主原料になっている方がいい証ですね♪
ミールや乾燥肉では、こうはいきません。
それに、生肉・生魚から加工されてフードの方が、熱で栄養成分が壊れることもありません。
その事実から、4Dミートやミールは
- 新鮮でもない(残渣が用いられている可能性がある)
- 生肉・生魚でもない
- 加熱して加工している分栄養成分も壊れやすい
などの点から、良質なたんぱく質を含むフレッシュミートに比べたら、よくないものと考えられるようになったのでしょう。
この、「良質なたんぱく質を含むフレッシュミートに比べたら」という比較対象が省略されたり、アフィリエイトサイトの誤情報だったり、ミールの加熱工程に関する誤解(発がんリスクがあるなど)が、ミール=悪いものという印象として広まってしまっているように思います。
4Dミート・ミールの栄養素<フレッシュミート(生肉・生魚)の栄養素
可食部からミールにしているものもある、たんぱく質が凝縮されて脂質が落ちるなど、ミールのメリットについてご紹介していましたが、そういったメリットを加味しても、
4Dミート・ミールの栄養素<フレッシュミート(生肉・生魚)の栄養素
という事実は変わりません。
唯一強みがあるといえば、脂質が落とせることですが、脂質も必要な栄養素です。減ればいいというわけでもありません。
脂質=悪いものじゃない
むしろ、質がいい原材料を使っているのであれば、その脂質も犬には必要な栄養なので、フードにいかせば良いわけです。わざわざレンダリングする必要があるのでしょうか?言い換えれば、品質がよくないから、レンダリングする必要があるのかもしれません。
この話をするときに、サンプルに出しているあるフードの原材料表記があるのですが、実際に見てみましょう。
レンダリングしたもの(=チキンミール)を原材料に使用しておいて、別途また、油脂(鶏肉脂肪)を配合し直してありますよね?
↑この時点で、ミールを使用して、脂質を下げるという売り文句はメーカーとしては言えたもんじゃありませんよね。
ちなみにこのフードは、生肉が配合されていません
たしかに、鶏肉脂肪は犬の嗜好性も上がりますし、悪いものではないんですよね。でも、だったら、元から脂質がついた鶏肉から、フードを製造したらいいのではないでしょうか。なぜわざわざミールが主原料になっているのに鶏の脂肪を追加しているの?…と思いませんか?
(私はこのフードの矛盾が不思議で仕方ありません。そしてこのフードは買いません。)
これ、ちょっとした「フードの闇」だと思います。この闇を知っているメーカーも多いからこそ、あえて「ミールフリー(ミール不使用)」を謳ったフードも出てきているのではないでしょうか。もとからフレッシュミートを使っていればよかったのに…と思いますね…。
○○ミール・乾燥肉(ドライ○○肉)との付き合い方・排除すべき?
さまざまなフードを見てきた中で思うことですが、フードの主原料はフレッシュミート(生肉・生魚)であることをおすすめします。良いお肉を食べて、良い体を作る、それを一番に考えてあげましょう。
人によっては、ミールや乾燥肉の工程を知って、発がんリスクを気にする人もいますが、ミールで発がんリスクが上がるというデータは存在していません。ですので、完全にミールフリーのフードを選ばないといけないということはないと思います。
ミールのフードを食べていても、なんの不調も出ないわんちゃんもいるので、避けないでもいいとは思うのですが、主原料にミールが採用されているものは、個人的にはあまりおすすめしていないということは、お見知りおきいただければと思います。
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