SNSなどを見ていると、犬におやつ(市販のもの・フルーツ・野菜や加熱したお肉・お魚など)を与えている画像(写真・動画)がよく出てきます。
犬が嬉しそうに・美味しそうに食べている姿はたしかにかわいいですし、飼い主さんにとっても癒し・犬にとっても喜びでもあるので、それ自体がダメということではありません。おやつはコミュニケーションの一部として、上手に使ったら良いと思います。
厳しい獣医は、おやつはいらないとハッキリ断言しますが、私はそこまで厳しい犬の管理栄養士ではありませんので笑。しかし、そうとはいえ、管理栄養士としては、与え方・与える量について気になることがあります…。

そんな大きいサイズで与えたら、お腹壊すよ?!
ということです。ほかにも、「そんなもの、与えないほうがいいと思うけどなぁ…」「与えても良いにしても、量多すぎじゃないかな…」というような、犬の健康を害しかねない与え方をしている方を多々お見かけします。
今回は、飼い主さんが注意しておきたい、おやつの与え方についてご紹介していきますので、ご自身もそのようなことをしてしまっていないか、注意してみてください。愛犬を知らぬ間に苦しめているかもしれません。
なお、いろいろ書いてありますが、犬の体質には個体差がありますので、ご自身の愛犬の食生活が問題ないか心配…という方は、お気軽にお問い合わせください。(※状況によっては、動物病院へ行くことをおすすめすることもあります。)
おやつやトッピングアイテムを与える時は、小さく刻んで与えよう!
茹でた野菜やお肉、魚、フルーツなどを与える場合には、必ず、1cm各程度のサイズ、もしくは、ふだん食べているドッグフードのひと粒のサイズほどに、小さくちぎって(刻んで)与えるようにしましょう。市販のおやつなどでも、可能であれば、小さくして与えておいたほうが安心です。
「見ているから大丈夫」、「噛んで食べてるし大丈夫」「いつも問題なく食べてるし」と安心していませんか?食べたとしても(その時はよかったとしても)、その後、お腹を壊す原因になってしまうかもしれません。
なお、ガムや硬いおやつなど、小さくできないものもあると思います。その場合は、丸飲み・早食いをしないように、必ず飼い主さんが見ている時に与えましょう。また、見ている場合であっても、10分だけ・15分だけなど与える時間を決めておくと、なおよしです。
実際に販売されている、硬めのおやつの注意書きを見てみると、「適切な大きさにして与えてください」「食べ方や習性によっては、のどに詰まらせるおそれが…」というフレーズが書いてあるものが大半です。特に、興奮している時などは、急いで飲み込んでしまう危険があります。
目を離した隙に飲み込んでしまう子もいるので、油断しないように!私の周りですら、大きなサイズのものの丸飲みで、お腹を壊した経験がある犬が多数いますので、広い目で見たら、こういったトラブルは日常茶飯事的に多く起きているのだと思います。
今は問題なく食べられたとしても、その生活を続けていたら、胃腸に負担をかける状態が続き、下痢や軟便、血便や嘔吐などの症状が出てきてしまうことも否めません。お腹が不安定になると、さまざまな不調の引き金になります。食べ物のサイズ・食べ方は、案外バカにできないのです。
犬の骨格は噛んで食べる構造になっていない!噛まないのが当たり前
よく、「うちの子食欲旺盛だから、噛んで食べないの」「すごい勢いで丸飲みで食べちゃうの」「がっついて食べて、噛んで食べないんだけど」なんて話を聞きます。実際に、そういったご相談もよくあるのですが、結論からお伝えしますと、犬は基本的には噛んで食べません。
噛んで食べる骨格になっていないので、噛まずに食べるのがふつうで、消化において、噛む必要がない仕組みになっているのです。ですので、そもそも、「多少大きくても、噛んで食べるだろう」という、人間ならではの発想自体が間違えています。
人間からしたら、ゆっくり・噛んで食べるのが当たり前ですので、その感覚で犬のことも見ていると、「うちの犬は、噛んで食べないくらいやんちゃな食欲モンスター」なんて思うかもしれません。でも、それ自体が間違いです。犬からしたら濡れ衣もいいとこ。。

人間の尺度を犬に当てはめないでくれる?
犬の場合、消化は胃に入ったところからスタートします。かたや人間は、よく噛んで唾液を出すことで、その唾液に含まれる消化酵素(アミラーゼ)によって炭水化物(デンプン)分解をしており、つまり、口に入れた時点で消化がおこなわれているということです。
このように、消化のメカニズムが違うのに、犬が噛んで食べると考えるのが間違いであって、噛んで食べないといけないサイズのものを与えることは危険な行為だと認識する必要があります。急いで食べて丸飲みしているのを、良いくいっぷりと笑っている場合でもありません。
犬は周りに自分の食べ物を奪われまいと、急いで食べようとしますから、そんな悠長に噛んで食べるなんてしません。詳しくは、以下の記事に記載してあるので気になる方はご確認いただければ幸いです。
ドッグフードは口のサイズに合っていれば、噛まずに食べても大丈夫です
念のため記載しておきますが、ドッグフードは丸飲みしたり、噛まずに食べたりしても、胃の中でしっかり分解されるように作られているので、丸飲みしても問題ありません。(※もちろん、愛犬の口のサイズに対して、フードの粒が大きすぎ・小さすぎという場合は除きます。)
口のサイズや食べ方に合っていないフードを与えていると、誤嚥や喉に詰まらせる危険もあるので、早食い癖がある子は注意をしておいた方がよいでしょう。
ただし、今回のテーマはフードではなく、おやつ(市販のもの、茹でたお肉・お魚・野菜、フルーツ)の話です。問題は飼い主が与える、硬いおやつや硬い果物などを与える場合。必ず小さく刻んで、飲み込んでも胃腸で消化できるレベルのサイズにして与えてください。
人間の一口サイズは犬には大きすぎ!噛んで食べると思わないで!
SNSなどで見かける危険な動画として一番多いのが、人間にとっての一口サイズのフルーツや茹でたお肉、魚、野菜などを与えているシーンです。身に覚えのある方は、重々注意してください。
人間が食べる感覚でカットしたサイズのもののほうが、見栄えはいいかもしれません。しかし、犬からしたら、そんな大きいサイズのものを出されても、先ほど触れたように、周りの人(や犬)に取られまいとして、急いで食べるだけです。
噛んで、自分の消化器官に良いサイズにして食べることなんてありません。「噛んで食べなさい」と犬に言葉で言ったって無駄です。その前に、そんなサイズのものを与えている方が間違い。仮に、ゆっくり食べていたとしても、口のサイズに合わないから、ゆっくり食べているだけで、

もう少し食べやすくしてよ…
というのが、愛犬の本音かもしれません。
トッピングについても同じです。過去にSNSで、ゆで卵を半分に切った状態でトッピングして与えている方の画像を見たことがありますが、「それ、飼い主さんの自己満足ですよね…」というのが本音でした。1/2サイズの卵なんて犬にはサイズも大きすぎますし、量も多すぎます!
こんな飼い方、意識が高いわけでもなんでもありません。自身の犬をグルメに見せたいだけの自己満足。ゆで卵は栄養が高いため、1/2個もトッピングで与えていたら、栄養がオーバーしていますし、コレステロールも高いし、アレルギーリスクも高めかねないものですから。

与えて良いからと与えるのは、愛犬の健康を害するだけ
人間からしたら、一口サイズであったとしても、犬の体のサイズから見たら、とんでもない量・大きさになりますよね?人間からした「ちょっと」は、犬にとっては結構な量になることもあります。
トータルの栄養バランスという意味でも、人間にとっての一口サイズを犬に当たり前のように与えているのであれば、ただちにそれはやめてください。
さらに、その大きなサイズのものを勢いよくがっついて食べる犬を見て、「うちの子、これ本当に好きなんだよね!」と勘違いしているのであれば、当サイトとしては全力でとめます。この機会に、刻んで与えていない自分の過ちに気づいてください。
ゆっくり食べているのは、その食べ物が嫌いなわけではない!
ゆっくり食べているのは、その食べ物が嫌いなわけではありません。逆に、早く食べたからといってその食べ物が愛犬の好物かというと、そういうことでもないわけです。
また、噛んで食べないのは習性であって、噛んで食べないことに悩む必要はないのですが、かといって、嚙んで食べないのは食欲旺盛だからというわけでもありません。
大事なのは、
など、日々のちょっとしたことに、与える側が注意することです。

犬の体は飼い主さんが与えたものでできていますから
消化に悪い大きなサイズの果物などを与えていたり、消化しにくい牛皮ガムやアキレス腱などの硬いおやつをたくさん与えていたり、食べてはいけないもの(拾い食いや噛むおもちゃなど)を食べていたり、そんな食生活をさせていたら、愛犬がお腹を壊すのは当然ではないでしょうか?
まずは、そもそも犬は噛んで食べる習性がないこと、外敵から食べ物を取られまいとして急いで食べてしまう習性があること。この2つを念頭に置いておいてください。
そうしたら、大きなサイズのものを与えたりすることも、噛まずに食べることを犬のせいのように考えたりすることもなくなるでしょうし、愛犬のお腹の不調も幾分軽減できるはずです。そのうえで、正しい栄養の知識を持って、健康的な食生活を愛犬に送らせてあげましょう。
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