犬にとって良い脂肪と避けたい脂肪とは?脂肪・脂質=太るではない?!

ドッグフードの知識・選び方

犬にとって好ましい脂質と、たくさんは取らせたくない脂質があるのをご存知でしょうか?脂肪・脂質といっても種類や働きはさまざまで、率先して摂取しておきたいものと、控えた方がいいものがあります。

また、「脂肪(脂質)」と聞くと、「脂(あぶら)」というイメージも手伝って、太る原因と考える方も多いかもしれませんが、必ずしも、脂肪(脂質)=太るというわけではありません

しかし、あまり良いイメージがなく、極端にセーブしていたり、あるいは、そもそもの栄養素の働きをわからずに与えているフードで、知らぬ間に脂肪(脂質)過剰・欠乏に陥っている犬の相談をお受けするケースもよくあります。

ダイエット中だとしても脂質は大事!

今回はそんな、過剰摂取もダメ、かといって、欠落してもダメな、犬の5大栄養素のひとつでもある「脂肪(脂質)」についてご紹介していきます。(※以後、脂肪という言い方ではなく、脂質と統一して記載していきますのでご了承ください。)

少しマニアックな栄養学な話になりますが、これを把握できていたら、ドッグフードの成分や原材料の説明に出てくる怪しい説明も理解でき、今後のフード選びの役にも立つはずです!難しく考えずに、愛犬のための知識として学んでみてください。

なお、いろいろ書いてありますが、犬の個体差もありますし、愛犬の体質を考えたフード選びや脂質について知りたい・相談したいという方は、お気軽にお問い合わせくださいね!

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「脂質」はよくない?太るから控えた方がいい?肥満の原因になる?

脂質は犬が健康生きていく上で欠かせない、五大栄養素のひとつです。そのため、太りそうだからと控えすぎはよくありません。バランスよく摂取する必要があります。また、どんな脂質を取るのか、どのくらい摂取するのかによっては、太る原因になるとも限りません。

脂質にあまり良い印象がない方は多いかもしれませんが、AAFCOでも犬が1日に摂取しておきたい脂質量は提示されており、この必要量よりも低い摂取量が続けば、健康を害する危険もあるので注意が必要です。

パピー・繁殖・泌乳期 成犬
たんぱく質 22.5%以上 18.0%以上
脂質 8.5%以上 5.5%以上
繊維 MAX4%(以下)
灰分 *各成分によって異なる
水分 ドライフードならMAX10%(以下)
※ウェットフードの場合は水分を0にした状態で、上記の栄養価をクリアしているという認識になります。

上記は最低限の数字。それ以上必要です

もちろん、たくさん取り過ぎるのもよくないのですが、

  • 脂質についての飼い主さんの知識不足
  • 間違えた給餌方法、給餌量
  • 間違えた食べ物に対する考え方
  • その犬に合っていないフードの給餌

などから、脂質過多・脂質欠乏がおき、皮膚や消化器に関するトラブルに陥る犬が多いのが現状です。

まず、飼い主さんは、脂質は犬にとって過剰摂取してもダメ、かといって、欠落してもダメな栄養素であるということを念頭に置いておいてくださいね。

 

そもそも「脂質」の働きとは?過剰摂取(過多)や欠落するとどうなる?

脂肪・脂質について詳しく話を進めていく前に、脂質の体内での役割をさっとご紹介しておきましょう。

  • ビタミンの吸収を手伝う
  • ホルモンバランスを保つ(パピーや繁殖期には特に重要)
  • 関節・被毛・皮膚ケアに効果がある
  • 抗アレルギー作用があり、免疫力がアップする
  • 体温を保つ

などがあり、どれも健康には欠かせないものということがわかりますよね!

また、体内での働きという意味ではありませんが、フードの嗜好性を高めて食いつきをアップさせる、フード自体をなめらかな舌触りにするなどの役割もあり、フードに配合することでプラスになることもあるんですよ。

過剰摂取もダメ、欠落もダメ。バランスが大事!

ただし、過剰摂取は肥満の原因にもなりますし、その嗜好性ゆえに食べ過ぎや偏食の原因にもなりかねません。消化器に負担をかけることもありえるので、注意が必要です。逆に欠乏してしまうと、肌がカサカサになってしまったり、被毛の質が悪くなったりしてしまいます。

さらに、脂質は関節ケア成分の源ですので、関節のケガをしやすくなったり、炎症を抑えることができずに、カイカイや涙やけなどが治りにくくなったりしてしまうことも…。

このように、思いがけないトラブルに見舞われてしまう危険がありますので、脂質の摂取量やどんな脂質を摂取しておくべきかなどは、飼い主さんも注意してあげる必要があるのです。

 

 

犬の健康維持に必要な脂質とあまり多く与えたくない脂質がある?!

脂質には種類がたくさんあります。それぞれ詳しくみていくと、なにが良い脂質で、なにがあまりたくさん取らせたくない脂質かわかるので、少々マニアックなお話にはなってしまいますが、少し触れておきましょう。

まず、脂質を構成する「脂肪酸」単位で見ていきますと(脂肪酸の集合体が脂質というイメージです)、大きく分けて2つあります。

飽和脂肪酸
  • 常温で固まる
  •  肉の脂身、乳製品など動物性の脂肪やココナッツオイルに多い
  • 体内生成ができる
不飽和脂肪酸
  • 常温で固まらない
  • 植物油や魚油に多く含まれている
  • 体内生成ができないので食べ物から摂取する必要がある

上記のとおり、飽和脂肪酸は体内生成できるため、過剰に取る必要はありませんし、取りすぎるとコレステロールを増やしてしまいますのでご注意ください。飽和脂肪酸の多い原材料が配合されていて、脂質を補えているようなフードは避けた方がよいでしょう。

どんなものが飽和脂肪酸が多いの?

×たくさんとるのを避けたほうがいい飽和脂肪酸×

  • サラダ油(パーム油)
  • バターなどの乳製品
  • 牛肉、豚肉などの赤肉系の脂質
  • ラードなど肉系の脂分や鶏皮などの脂部位
  • 植物性油脂(ココナッツオイル含む、由来不明なもの)
  • 動物性油脂(由来不明)

など

こういったものは、おやつや安価なフードに配合されがちなので、原材料を確認してみてくださいね。(100%絶対ダメということではありません。なお、不飽和脂肪酸が多い食材は次の項目でお伝えします)

一方、不飽和脂肪酸は体内生成できないということもあり、食べ物からでしか摂取できない脂質のことを指し、必須脂肪酸と呼ばれています。つまり、これこそが必要としている質の良い脂肪です!

さらに必須脂肪酸には、主に、

  1. オメガ3=α-リノレン酸・EPA・DHA
  2. オメガ6=リノール酸・アラキドン酸

の2つがあります。

こういったものは積極的に摂取しておきたい脂質です。

これらは抗アレルギー効果抗炎症作用、健康な被毛の維持を促す成分なので、皮膚が弱く、カサカサになりがちだったり、フケが出やすくなったりしている子は、上記のような脂肪を取ることで、皮膚・血流が回復して、症状が改善することも期待できます。

このように「脂肪(脂肪酸)」「脂質」といっても、細分化してみていくと、特徴は違うことがお分かりいただけたでしょうか?

日本では超小型犬・小型犬なども人気ですので、関節ケアの意味でも体重管理が必要な子も多いかもしれませんが、必要な脂質はしっかりとって、間違えた脂質制限などはしないようにしておくとよいでしょう。

 

必須脂肪酸と呼ばれる「不飽和脂肪酸」が多い食材ってどんなもの?

どんな食材に不飽和脂肪酸が多いのか、知っておきたいところですよね!

犬を太らせるだけではない、質のいい脂質(=不飽和脂肪酸が豊富)な食材には、以下のようなものがあります。

  • ひまわり油、亜麻仁油、ごま油、えごま油
  • チアシード、ごま
  • 魚(サーモン、いわし、さばなど)、魚油

フードを選ぶ際に、原材料一覧を確認して、こういった食材が使用されていたら、

アレルギーがおさまって、皮膚や毛がきれいになりそう!

と思ってよいでしょう。(ただし、上記に挙げた食材にアレルギーがなければです。上記で挙げた食材は、アレルギーリスクは低いものばかりなので、そんなにアレルギーとして該当する子はいないと思いますが。)

カイカイ(皮膚炎)やアレルギー対策の犬の場合、サーモンや白身魚などのフードが推奨されるは、こういった理由からなんですね。

逆に、フードの説明で、上記のような質のいい脂質ではないもの(動物性油脂や植物性油脂)にもかかわらず・「脂質の品質」を気にすることなく、脂質源としてあたかもいいもののように書いてあるドッグフードは、しっかり見極めて選ばないようにしておきましょう。

 

 

意図していなところで脂質不足・脂質過多になっていることも?!

特に脂質を抑えているつもりでもなかったり、もしくは問題ない量で与えているつもりだったりする場合でも、脂質を取りすぎている、もしくは不足してしまっていることがあります。

よくあるのが以下の2つ。

  1. 運動量に見合わない成分のフードを与えていえる
  2. 適切なフードの給餌量を把握していない

たとえば、運動量が多くないのに、高たんぱくなフードを食べていると太ってしまうことがあるのですが、だからって給餌量を減らしていたら、必要な脂質までもが摂取できなくなってしまいます。たんぱく質摂取量は抑えられても、必要な脂質まで取れていないかもしれません。

逆に、運動量に見合わない高たんぱくフードを食べていることで、余ったたんぱく質が糖化して、脂質に変わり脂質オーバーになってしまうこともあります。または、運動量と適正体重を把握できておらず、フードの量が足りていないケースも。

正しく管理できていますか?感覚でやってませんか?

おやつを与えたいからとフードを減らして、必要な栄養が足りていないことはないでしょうか?もしくは、太るのが怖いからと量を減らしすぎていることもあり得ます。逆におやつの与え過ぎで、カロリーオーバーはしているものの、必要な栄養がとれていないこともあるものです。

このように、正しい給餌量(愛犬が1日に必要なカロリー摂取量)を把握できていないことにより、間違えた体重管理をしていたり、愛犬に良いと信じて疑わないで、合っていないフードを与え続けたりしていることから、脂質バランスが崩れてしまうことがあります。

ここでご紹介したような、脂質過剰による症状や、欠乏による症状が出ているようであれば、一度、正しい給餌量や適切なフードの見直しをしてみるとよいでしょう。

 

 

脂質を抑えた方が良い犬もいる!?でも、どんな状態の犬の場合?

過剰摂取も欠乏もよくないとはお伝えしたものの、脂質を極力抑えたほうがいいケースもあります。

ここでいう抑えたいケースというのは、単なる体重オーバー(肥満)などではなく、採血検査など、詳しい検査をした上での話、もしくは疾患がある場合の話です。具体的には、

  • 総コレステロール、中性脂肪が高い
  • AST、ALTなど肝臓に関する数値が高い
  • ALP、GGTなど肝臓と胆嚢などに関する数値が高い
  • 糖尿傾向にある場合
  • 膵炎、高脂血症、腎臓病、クッシング症候群、皮脂過剰による皮膚疾患

などがありますが、これらは、しっかり動物病院で検査をしてこそわかることですので、まずは獣医の指示に従って然るべき検査など受けるようにしましょう。

簡単に判断できることではないので、まずは検査を!

なお、その後の愛犬の食事については、獣医から指定の療法食を出されることもありますし、今のフードのまま特に替えるなどはなく、投薬をしばらくして経過観察をするケースもあります。このあたりは、獣医判断の医学的な話ですので、当サイトの栄養学だけでは対応できません。

症状・数値レベルによっては状況も対処法も違ってきますので、独自判断で勝手にあれこれ対応しようとするのではなく、獣医に相談の上、決めるようにしてください。

当サイトでは、獣医から療法食を出されている間は、治療の妨げになりかねな栄養面のアドバイスは致しかねますのが、獣医から「脂質を抑えるよう」など指示があってフードを迷っている方などは、もちろん、相談可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

 

 

原材料をしっかり見て、成分表も確認してフードを選ぶのが大事!

クチコミやドッグフードのランキング評価が良いからといって、そのフードが本当に愛犬に合うかどうかはわかりません。いくら評判が良いフードであっても、犬にも個体差はあり、ちまたで人気なものがその子に必ずしもいいかはわからないものです。

そんなフードの選び方ではなく、しっかり信頼できる(食事を大事に考えている)獣医に相談したり、正しい犬の知識を持つ人(ネットや犬に詳しいというだけの人ではありません)に相談するなどをしてフードは選びましょう。

食事を重要視している獣医さんも結構多いんですよ

ただし、ペットショップのスタッフさんに相談するのは、正直、そのスタッフさんがどれほど食事の知識がある方かはわかりません。ペットの食事に詳しくないスタッフの方が多い気はします。店頭で扱っているもの以外紹介できませんしね。(※これはあくまで個人的な意見です)

インターネット、クチコミ、ペットショップのスタッフ、どう頼って、なにを信じるも飼い主さんの自由ではありますので、ここまでにしておきますが、飼い主さんには犬の正しい食生活の知識をつけて、愛犬に合うフードを選べるための知識をつけていけますように!

 

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